社会主義(共産主義)とは何か?ベトナムを例に、極限までわかりやすく解説するよ

flag ベトナムの政治

※非公開にしていた過去の記事23本をこのたび一部更新して再公開しました!よかったら覗いてみてください~。(リンク切れは徐々に直してまいります)

祝・50記事達成記念企画。「自分でもイマイチようわかってないことを、人さまにわかりやすく伝える」という壮大な試みに今回チャレンジしてみました。

ベトナムで暮らしたり、ベトナムにかかわる仕事をしているとちょくちょく出てくる「社会主義」というワード。国の正式名称が示す通り、ベトナムは社会主義国家です。社会主義って結局何なのよ、経済自由化したから社会主義じゃないんじゃない?社会主義なのに指導者は共産党?社会主義と共産主義の違いって何?そういった疑問に一気に答えることを目指してまとめてみました。

なお、今回(に限ったことではないですが)は「わかりやすさ」を最優先事項とし、多少の認識違いは無視して進めていきます。また、本意ではないですが、今回に限っては重要な部分にはマーカーを引いています(そこ以外も読んでね)。専門用語は【】で記しておきますので、気になった方はそれらを個別にググって補ってみてください。

2021年に行われた第13回ベトナム共産党大会のようす(出典:新华网

社会主義と共産主義の違い

しょっぱなから大胆にいかせていただきます。おおざっぱに言うと、社会主義と今日一般的に使われる共産主義はほぼ同じ意味と考えてしまって問題ありません。実際、日本共産党なんかは社会主義=共産主義と位置付けています。どちらも簡単に言うと、「お金やモノをみんなで共有して貧富の差をなくそう」という考え方です。

狭い意味では、社会主義は「国が工場や機械などモノをつくる装置【生産手段】とモノの値段をガッチリ管理して、みんなでシェアする」という考え、共産主義は「社会主義がめっちゃ成功して、みんなに充分すぎるくらいモノが行き渡ってるから争いも起きないし、最終的には管理する役目の政府すらいらなくなるという究極的に理想な状態」を目指す考え方です。

つまり、社会主義は共産主義の発展段階、共産主義は社会主義の進化バージョンということになります。(社会主義・共産主義者の主張は、資本主義→社会主義→共産主義の順に発展するとしています。)

まずはその理想の姿の一歩手前である社会主義を成功させて、最終的に共産主義を目指す政党が共産党です。

ちなみに、いまのところ社会主義が成功した例はないため、共産主義国家は今日まで誕生していません。

ということで、基本的に以下の説明は「社会主義」に統一します。

彼らの主張によると、左から資本主義→社会主義→共産主義となります(出典:cucan online shop

社会主義という考え方が生まれた背景

いわゆる社会主義という考え方が浸透したのは、カール・マルクスという偏屈な頑固オヤジ人が提唱した19世紀にさかのぼります。当時、ヨーロッパでは王様と貴族が支配する体制【封建制】から資産家を中心とする市民に権利が移った【市民革命】のち、機械の発達によってモノが大量生産できるようになった【産業革命】ことで、同じ市民の中でも工場のオーナー【資本家】とその下で働くワーカー【労働者】という階級が出来上がってしまっていました。労働者は最低限の賃金しか与えられず、労働者が生み出した利益は資本家が搾取する構造になっていて、貧富の差はとんでもなく大きくなり深刻な社会問題となっていました。そこで、この貧富の差をなくしてみんなが平等になれる仕組みとして考え出されたのが社会主義でした。こういった背景があったことから、社会主義者は社会主義を資本主義の発展型と位置付けているのです。

また、それまでの体制をひっくり返すほどの大きな変革を引き起こす【共産主義革命】には「暴力以外の手段はない」という主張でもあったため、なにかしらの支配に苦しんでいた状態からの脱却を目指す革命家にとっては親和性のある考え方でもありました。

ベトナムを例にとると、ベトナム共産党を創設したホー・チ・ミンはたしかに社会主義自体にも傾倒はしていたようですが、本来の目的はフランスの植民地支配からベトナム人を救い出すこと【民族解放】であり、社会主義は革命家をまとめ上げる手段であったと考えることもできます。

「ベトナム共産党の栄光に万歳!」(出典:Quân đội nhân dân

ちなみに、マルクスの影響を受けてロシア革命を起こし、世界初の社会主義国家であるソビエト連邦を成立させたレーニンをホー・チ・ミンが支持したことから、ベトナム共産党は現在でもマルクスとレーニンの考え方を党の基本方針としています【マルクス・レーニン主義】。

共産主義の考え方自体は、マルクス以前にも紀元前のプラトンやらトマス・モーアやらトマーゾ・カンパネラやらが過去に提唱していますが、ここではまるっと省略します。

社会主義を経済と政治に分けて考えてみる

これまで述べてきたように、社会主義の本質は資本主義の対立軸として「経済活動のあり方」を変えることでした。ここでもう少し社会主義体制を分類してみると、経済活動のあり方に加えて「政治のあり方」にも特徴があります。

  • 経済:社会主義(計画経済)↔︎資本主義
  • 政治:社会主義(独裁制)↔︎民主主義

経済面では先に挙げた通り、社会主義は「自由な経済を認めず、すべてのモノを国が所有して管理する」というやり方です。個人が生産手段を持つことは認められず、生産活動は国が決めた計画に沿って進められます【計画経済】。

国が何から何まで全部決め、それを守らせるという強い権力を保つためには、「いろんな主義主張の政党が、みんな納得するまで話し合って物事を決める」という民主主義は国にとって不都合です。「国のやり方は間違ってる!」と大っぴらに喧伝されると、絶対的な存在であるはずの政府の威厳が損なわれて国の統制がままならなくなってしまいます。そういうわけで、社会主義体制はどうしても一党独裁にならざるを得ないわけです。

ベトナム共産党が創立された2月3日前後に咲く桃の花(出典:Trang tin Điện tử Đảng bộ TPHCM

社会主義の問題点

社会主義のどこに問題があるかを一言で表すと、「人間の自然な生き方に沿った仕組みになってない」ということになります。

経済面

個人の所有が認められないということは、どれだけ頑張って働いてもそれが報われることがないため、みんなやる気をなくして「いかにしてサボるか」を考えるようになります。効率的な働き方とか、新しい技術を生み出す動機が生まれず、競争による企業努力は望むべくもありません。結果として超非効率・超高コスト体質になってしまい、「みんな平等でみんな貧乏」な状態に行き着くことになります。

結局、ベトナムは社会主義勢力が南北ベトナムを統一してわずか10年で、経済的に行き詰まります。そこで市場経済を徐々に取り入れるという路線変更を行い【ドイモイ政策】、それ以降ベトナムは目覚ましい経済成長を遂げて現在に至ります。ドイモイ政策は当初うまく機能せず、このとき国名から「社会主義」を外そうという案も真剣に議論されています。

なおベトナムに先立ち中国も市場経済の導入が行われており、ソ連とラオスもベトナムと同時期に、キューバも遅れて路線転換しています。北朝鮮はよくわかりませんが(少なくとも日本は国家と認めてない)、今や社会主義の根幹ともいえる計画経済を忠実に実施している国家は既になくなっているのが実情です。

アメ車がキューバから消えてしまう前に、この風景を見てみたい!

これは周知の話ですが、ベトナム戦争にアメリカが大々的に介入した原因そのものも、冷戦を背景として西側諸国(主にアメリカ)が敵国である社会主義国家のソ連の勢力拡大を阻止するために、社会主義の拡大を削ごうとしたからです。当時、ある国が社会主義化すると周りの国も次々にそうなるとされており【ドミノ理論】、ベトナムの社会主義化【赤化】は当時なんとしても避けなければならない重要課題であったわけです。

政治面

特定の組織や人間が大きな権力を持つと、そこにはほぼ必ず腐敗が生じます。力が強い人間にはすり寄る人間が出てくるのも、これも言ってみれば人の性。ワイロを受け取る権力者と、便宜を図ってもらう不届き者だけが不正に富を蓄積していき、みんなが平等であることを目指して生まれた仕組みがいつしか一部の金持ちと大多数の超貧乏を生んでしまうことになるという矛盾をはらんでいます。

ただし、権力の集まるところに腐敗がはびこる構図はなにも社会主義に限ったことではなく、ベトナムで長期にわたって続いた各王朝においてもだいたい同じことが起きています。ホー・チ・ミンにしろレ・ロイにしろ、組織の創設者は正義と潔白さを持ち合わせていても、後に続く指導者の中にはそうでない者が現れ、やがて組織は衰退していきます。

独裁国家の中では、シンガポールが唯一、腐敗撲滅を達成しているのではないでしょうか。ベトナム共産党は現政権が近年かなりの力を注いでいるものの、足元では汚職や不正がなかなか減っていないのが実態のようです。

「明るい北朝鮮」ことシンガポール

ベトナムをはじめとする社会主義諸国は、程度の差こそあれ経済面での社会主義を既に放棄している一方で、政治面は一党独裁制を維持しています。言論の自由には制限があり、特に政党の批判は検挙の対象にもなりえます。

また一般論として、独裁制より民主主義のほうが戦争を起こしにくいと言われています。勝手な論理で隣国に攻め入る国とか、しょっちゅうミサイルを飛ばす国とか、クレイジーな独裁者が暴走すると全世界が迷惑します。最終的に被害を受けるのは罪のない一般市民ですから、本当にやりきれません。そもそも社会主義国家は武力革命によってのみ誕生するという大原則も忘れてはいけません。なおベトナムに限って言えば、歴史的背景などの諸々を踏まえて、現代において周辺諸国に軍事侵攻する可能性は個人的には極めて低いと見ています。

若干話が逸れましたが、社会主義の副産物である独裁政治は指導者がミスると被害が甚大になる、ということです。人間(またはその集団)は大なり小なり必ずミスをする生き物なのに、それを防ぎづらい構造になっているのが政治面での問題点です。

早くSt. Javelinが不要な世の中になってほしい(出典:BOSS HUNTING

社会主義の成功は不可能か?

上の項で偉そうに社会主義の問題点をあげつらいましたが、現代の社会で貧富の差が社会問題になっているのもまた事実。資本主義の問題点は19世紀から解決されることなく今日に至っています。若者の中には社会主義を支持する動きも広がっているとのことで戦慄するばかりですが、平等な社会の実現が理想の姿であることも確か。社会主義の問題点をカバーして、うまく成立する方法はないものでしょうか?

ここからは僕の妄想になりますので、興味のない方は「そっ閉じ」してくださいませ。

個人的には、エネルギー自給率の高い先進国であれば近い将来実現の可能性はあると思います。

社会主義の問題点は、経済面では人々が努力するインセンティブがないことと、競争から生まれるイノベーションが起こりづらいこと、政治面では小さい集団のミスを防ぎづらいことでした。

それを、近年急速に発達してきたAIに委ねてはどうでしょうか?2045年にはAIが人類の知能を超えると言われており【シンギュラリティ】、そうなったらAI自身が人間に代わってイノベーションを担っていけることでしょう。経済はAIに任せて、人間は経済競争以外のところ(スポーツや芸術)で競えばよいでしょう。エネルギー自給率が低くても、世の中のクリーンエネルギーへの転換がさらに進めばこれもなんとかなるかもしれません。そしてAIは人間と違って判断を間違えません。絶対的な原理原則を正しくAIに仕込むところまでが人間の仕事です。

…といってもそこが最大に難しいところで、例えば「平和維持」が大前提と置いたときに、クレイジーな隣国から攻め入られたときの「平和維持」とは何なのか、大原則を「人類の幸福」としたときに誰の幸福を指すのか、「地球環境の持続可能な発展」を最優先としたらAIに人類が滅ぼされちゃうんじゃないかとか、少し考えただけでもいろいろ問題が出てきます。AIが悪者の支配下に置かれてしまったらどうするんだとか、岸田さんのように慎重に慎重を重ねながら検討することを検討していく必要があるのは間違いないですが、これからの社会を考えていくうえではAIが少なくともキーワードになっていくのではないかと思う次第です。

世の中にはおんなじようなことを考えている人は必ずいるもので、AIの将来を僕なんかよりしっかりまとめあげている人がちゃんといましたよ。(AIが神になる日:松本徹三

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