前回、ベトナムにやたら多いバイクがどのように普及したか、なぜこんなにも人気を博すことになったのかをご紹介しました。
その過程で数字を拾っていったらけっこうハマってしまったので、今回はいつもとはだいぶ趣向を変えて、調べてまとめたデータをシェアしたいと思います。どういうわけかこのブログにたどり着いた大学生や企業の若手マーケッターのみなさんは、このページの数字を鵜吞みにせず(ちゃんと調べてるつもりですけどね)、せっかくなので元データまで遡って調べましょうね!せめて望むデータにすぐアクセスできるよう、直下にリンク貼っときますんでね。
もう「バイク保有率世界一」になってるんじゃないか説
バイクの保有率(普及率)の世界一をググってみると、だいたい出てくるのが台湾。たまに、タイが世界一と書かれていることも。下の写真は台北の通称「バイクの滝」。
そして台湾世界一説によく出てくる根拠がこれ。
たしかに、これを見ると圧倒的です。。文献によって保有率が58%から65.3%まで開きがあれど、最大の65.3%という数字はどうも↑がソースのようです。
でも、よく見ると2011年のデータ。さすがにもう10年以上経ってます。ということで、できるだけ最新のデータを引っぱってきて求めた数字が、
2011 | 2015 | 2018 | |
二輪車保有台数(百万台) | N/A | 13.66 | 13.84 |
人口(百万人) | 23.23 | 23.49 | 23.59 |
人口100人あたり保有台数(台) | 65.3 | 58.2 | 58.6 |
下がっとるやんけ。ソースは↑のグラフと合わせてあるはずですが、保有台数が減ったんかいな?2011年データが怪しい気がしますが、ともあれ、やはり60台前後ということがわかりました。
対するベトナムはどうでしょう。こちらは国の機関であるベトナム国家交通安全委員会(NTSC)から拾ってきましたよ。
順調に、というか爆発的に増えてますね。。19年でなんと9倍です。1992年時は130万台だったと推定され、この30年でなんと55倍!そして人口も加味した「保有率」がこちら。
驚異の74台!台湾が58台だろうが65台だろうが、とにかく一気に追い抜いてます。2015~2018年の台湾のペースを見る限り、ベトナムの増加率には到底追い付いてはいないでしょう。
ちなみに、ふたつ前のグラフで示したように、クルマ(自動車)もこの20年弱で約8倍に増えています。主要各国との比較でいいますと…
…まだまだっすね。ベトナムだけ棒(もはや棒ですらない)を赤くしたのにそれでも目立たない…がんばれVinFast。とはいえ20年弱で9倍、この10年で3倍近くになっているだけあり、現地にいる人間としては「クルマ、めちゃくちゃ増えたな」という印象です。
では、もうひとつの世界一候補であるタイはどうか。こちらは「世帯普及率」の文脈で世界一と語られるようです。
2014年のシンクタンクの調査が元になっているようで、これでいうとベトナムはこの時点でほぼ世界一に肩を並べています。先日サパで少数民族の村々を訪れたのですが、小学生高学年から中学生くらいの子どもも普通にバイクで移動してましたからね(バイク自体はお父さんお母さんのだとは思いますが)。もはやベトナムの隅々にまでバイクは浸透しています。
ちなみに台湾と同じソース・手法で100人あたり保有台数を割り出してみると、タイは2015年時点で人口6872万人に対し2054万台ということで、100人あたり30台という結果に。
ということで、近年の伸びも加味すると既にベトナムは人口当たり保有率、世帯当たり保有率ともに世界一になっている可能性があります。そう指摘している文献が見当たらないのですが…調べた限りではその可能性は低くないのかなと思います。
(2024.1追記)インドネシアのメディア会社(Seasia Stats)の調査によると、ベトナムの利用率は72.8%で東南アジア11か国中トップとのこと。↑の数字とそう変わらない結果が出ましたね。ちなみに2位はブルネイで67%、次いでマレーシア45%、インドネシア45%、タイ31%と続きます。台湾はどうなった台湾は!東南アジア以外も調べてくれ~!
一方で、バイク市場は飽和状態に
上記で紹介したようにベトナムは世界有数のバイク王国であり、新車販売台数においても中国、インド、インドネシアに次ぐ世界第4位を誇っています。そんなベトナムも、実は伸びが減速してきています。
直近のピークからは3年連続して販売台数が減少しており、コロナによる需要減退の一面はあるものの、明らかに市場の飽和状態が見てとれます。
余談ですが、なんで2020年に270万台しかバイクが売れてないのに登録台数が1000万台増えてんだよ、というようなツッコミはここベトナムではご法度であります。ソースが違えばもちろんのこと、同じソースであってもどうやっても説明がつかない数字がたくさん出てくるリサーチャー泣かせの国なのです。万が一会社や大学にツッコまれたときには、730万台は土の中から出てきたとでも言っておきましょう。(マクロ経済の根幹である人口やGDPでも説明のつかない動きを見せてくれたりします。泣)
(2024.1追記)2023年通年のバイク販売台数は前年比16.21%減の251.6万台だったとのこと。つまり2022年は300.3万台だったわけですね。ソース元は国内景気停滞による耐久消費財の需要落ち込みを原因と分析していますが、やはり市場の飽和感は否めませんね。
さて前回も触れた、バイク以前にベトナムを覆いつくしていた自転車。バイクへと主役が移り変わる過渡期の生産台数推移がこちら。
この傾向を見るに、クルマが主役の座に躍り出る日も近い??そんな需要減退中のバイク市場のなか気を吐くのは…
世界のホンダさん!そのベトナムにおける市場シェアは、
衝撃の80%!!しかもここ数年で拡大傾向です(2024.1追記:2023年のシェアは83%。さらに伸びてる!2024年からはバイク電動化を準備を本格化させ、2030年までに世界で電動モデルを30機種投入するとのこと)。
かつて中国の「安かろう・悪かろう」バイクの大量流入によって10%台にまでシェアを落としたホンダ。そこからそれこそ血のにじむようなコスト削減を行い、品質が良くて価格も安いという無敵のホンダとして返り咲いてからというもの、シェアを拡大し続けついには80%の大台に。全日本人が見習うべき姿勢です。。
なお、クルマではトヨタが26%(ホンダは9%で2位)、インスタントラーメンではエースコックが50%以上、うま味・風味調味料では味の素が62%でいずれもトップシェアを持っているそうです。
(2024.1追記)2023年の自動車販売シェアはトヨタが20.8%で首位、日本勢はタコ・マツダが12.9%で4位、三菱11.2%で5位、ホンダ8.6%で6位。
さいごに
さいごに、車両の登録台数を取りまとめている国家交通安全委員会さんが本題として出していたデータもおもしろかったのでご紹介します。
2007年末にヘルメット着用が義務化され、交通事故死が格段に減ったよ、というデータです。それまでのベトナムはノーヘルが当たり前。義務化施行後も罰金怖さにヘルメットをつけていただけだったようですが、しっかり結果に結びついていますね。大体はコレ意味あるの?ってくらい薄~いヘルメットですが…。しかも、ホーチミンではほとんど見なくなりましたがなぜかハノイでは未だにけっこうノーヘル族がいます。
2020年からは自転車でも飲酒運転に罰金が科せられるようになったほか、バイクやクルマにおいても罰金額や免停期間が格段に厳しくなっています。
ということで、結局あまりクルマ事情については今回掘り下げられなかったので、またの機会に調べてみようと思います。
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