【共存戦略】こんなビジネスコラボもあったんですね、という話

noodle ベトナム経済

ハノイの旧市街にたいへん人気なブン(ベトナムの麺の一種)屋さんがあります。それだけだとこの話は終わっちゃうのですが、なかなか面白い共存戦略を敷いているらしく、今回はその辺をご紹介していきたいと思います。

まずはお店の紹介から

お店の名前はブン・ガン・ニャン(Bún Ngan Nhàn)。下記に紹介するブン・ガン(Bún Ngan)を売るニャン(Nhàn)さんのお店という意味です。2022年7月現在、このお店を紹介している日本語の文献は過去に一例しか確認できていませんが、ベトナム人にとっては非常に人気のあるお店で、僕が訪問した2回ともお店の前にはブンを待つ人の行列ができていました。昼時だと列に並んで注文を終えるのに15~20分ほどかかります。

店内もなかなかの盛況ぶりです。

看板メニューはブン・ガン(Bún Ngan)。ブンは米麺のひとつ、ガンは鴨のことです。日本人にも有名なフォーが平たい切り麺であるのに対して、ブンは細い丸太状の押し出し麺で、どちらも米粉から作られています。鴨の骨からとったダシのスープに、鴨肉が数種類乗っかっています(先の日本語のページではアヒル肉と紹介されていますが、鴨とアヒルは生物学上の違いはないということで、より馴染みやすい「鴨」の表現を使わせてもらいました)。また、ミエン(Miến)という春雨のような麺も選ぶことができます。どちらもかなり美味しいです。一杯5万ドン(約300円。円安…)。汁なし麺のようにもできるそうです。

数種類のお肉とベトナム名物の血を固めたやつ(写真奥)。中央のメンマも美味しい!スープも素晴らしい

軒先では店主のニャンさんがその場で鴨肉を骨から無造作に剥ぎ取り、ブンを入れたスープに投げ込んでいきます。希望者はわずかに肉が残った骨をボウル一杯分けてもらうことができ、それにしゃぶりつきます。隣の席の山盛りを撮りたかったけど、「骨を撮りたがる怪しい日本人」と思われることを恐れてついつい躊躇してしまいました。

店主ニャンさんは昭和の頑固オヤジそのもの。イヤなら食うなという態度で客に高圧的に接し、同時に従業員への文句も隠しません。店内の店員さんも同様に客を怒鳴り倒してきます。テーブルにティッシュがなかったので同僚がそれを頼んだら、「他から勝手に取りな!」という具合。僕も店員さんからベトナム語で何かを尋ねられていたらしく、気付かずにいると「何シカトしてるんだ!」と怒られました。そんなこんなでお店の中はベトナム人でいっぱいなのに、比較的静かです。。

麵屋とカフェの不思議な共存戦略

ベトナム版・頑固オヤジ(オバサン)が作るこだわりの一杯。これだけでも充分にキャラが立っているお店なわけですが、僕が本当に面白いと思ったのは、このお店が「ニャンさんのものではない」という点。このお店は本来カフェであり、カフェのオーナーは別にいてニャンさんはその軒先でブンを作って売っているだけです。彼女は毎朝スープの鍋を持って店に現れ、麺が切れると鍋を担いで帰っていきます。カフェは店の家賃を負担して、その空間と彼らの売り物であるドリンクを提供する一方、ニャンさんはその唯一無二の味で大勢のベトナム人を集客する。ベトナム人の同僚によると、少なくとも20年以上はこのスタイルのまま、この地で変わらず続いているとのことです。もちろんブンとドリンクの会計は別々です。

店主ニャンさん。鴨肉をちぎるちぎる

なお、ベトナム有数のフォー屋さんであるハノイのフォー・ティンなんかも、本店の店舗内で客を捌ききれない昼時は数軒先のカフェに客を送り込んで席不足を解消しています。逆にフォー・ティン自体は飲み物を用意しておらず、お茶などが欲しい場合は本店内であっても外のカフェからドリンクが運び込まれてきます。

どちらのケースも持ちつ持たれつの関係で成り立っているわけですね。

カフェの看板メニューも素晴らしい

集客をもっぱらビジネスパートナーに頼り、カフェにまるで実力がないような書きぶりをしてしまいましたが、実はこのカフェの看板メニューも秀逸です。ココナッツジュースの中に、ココナッツのスライスされたものとリュウガンというライチに似たフルーツ、さらにはタピオカのようなものも入っています。加えて種が抜かれたリュウガンの中には代わりにハスの実が入っており、それらを知らずに初めていただいたときは、次から次へと現れる味や食感の変化に大いにエンターテイメント性を感じました。こちらは一杯2万5000ドン(約150円)。せっかくなのでSen nhãn nước dừa(直訳:ハスリュウガンココナッツジュース)という何のひねりもない名前じゃなくて、「玉手箱カクテル」的な夢のある名前にしてほしい。と書きながら自分のネーミングセンスに絶望。。

下のほうに竜眼やタピオカ的なやつが沈んでます。美味!

おわりに

話は逸れますが、このお店はNgõ Trung Yênという小道に位置しています。ベトナムは道路の規模によって道の呼び方が異なり、例えば北部であれば大きい順にĐại lộ(街道)→ Đường(大通り)→ Phố(通り)→ Ngõ(小道)→ Ngách(路地)という風になります。そしてNgõは通常ĐườngやPhốについている通り名に準ずるわけですが(例:”Đường Quang Trung”から派生する小道は”Ngõ + 番号 + Quang Trung”となる。↓写真参照)、

このNgõ Trung Yênという小道の周囲にはその派生元のPhố Trung Yênがないという珍しいパターンであることがわかりました。同じ旧市街内でごくたまに見かける以外はあまりないケースで、成立の背景は謎です。

強引に趣味のほうに走ってしまいました。少しでも興味を持っていただいた方は「ベトナムの通り名」シリーズもぜひごらんください。

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