工事中断から10年超、ベトナムで最も有名な塩漬けビル工事再開!ついに完成なるか?

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みなさんホーチミンに観光や出張に行く際にほぼ必ず訪れるのが、市中心部にあるビテクスコ・ファイナンシャル・タワーの展望台。街の全体像を見渡すには上から眺めるのがいちばん。2018年にLandmark 81が完成するまでは、展望台といえばココ一択でした。

そして展望台に上がってすぐ目に飛び込んでくるのが、本当に眼前、まさに目と鼻の先で威風堂々しっかりと立ち枯れているでかいビル。

出張者の「何、アレ…?」という質問に対し、「よくわかんないんですけど、僕が赴任してきたときにはもうこうなってたんすよね…」といったやりとりを経験した駐在員は少なくないはず。

そんなアイツ、2011年の工事中断以来さまざまな憶測と疑惑と事件を生み出し続け、「○○という投資家に渡ったらしい」「今度こそ工事が再開する」「先日クレーンが動いてるのを見た」という噂が毎年のように流れていました。そしてこの度ついに、目に見える形で次の展開が…!果たして、今度こそビルは完成を迎えることになるのか?今回はこのいわく付きの塩漬け物件「サイゴン・ワン・タワー」改め「IFCサイゴン・ワン」についてまとめていきます。

2007年着工、2012年完成のはずが…

ビテクスコの展望台の目の前に、どーん!

当時の名前はM&Cタワー。敷地約6,700㎡、高さ185m、45階建ての計画で、竣工すればホーチミンで3番目に高いビルとなる予定でした(建設開始当時)。用途はオフィスをメインに、180戸の分譲マンションも計画され実際に分譲していたようです。100組以上がマンションを購入したとされ、中にはひとりで50戸をまとめ買いしたというツワモノも…!

事業主は2.56億ドル(約350億円)を投じ、建設工事が2007年に開始。その後に発生したリーマンショックの煽りも受け、工事が80%まで進んだ2011年に中断。8割方終わってるのにその後10年以上もそのまま風雨にさらされながら放置されることになるとは…なんたる経済損失!工事が中断されここまで長い間再開されなかった理由は明らかになっていませんが、資金繰りの悪化とも事業者間のトラブルとも言われています。

ビルはホーチミンの一等地に建っていることから、ホーチミンを代表する風景写真の数々に堂々と写り込んでしまいます。同市の指導者からは「ホーチミンの景観を最も傷つける物件のひとつ」、新聞社からは「写真(家)の敵」と揶揄される対象に。

放置され廃墟化するビル

建設が再開されることのないまま、事業は元の事業主から政府系の不良債権処理会社に渡り、競売にかけられるも不調に。その前後にも冒頭の通り新たな投資家の噂が立っては消え、前職に勤めていた僕の元に売り案件として紹介がきたこともありました。えらい安い金額だった記憶があり(↑の金額の10分の1くらい)、今考えるとありゃ詐欺ですな。。

先のマンション購入者たちは、契約の解除と支払った購入代金の返金および補償を求めて提訴。事業主側に購入代金の返金と遅延利息の支払いを求める判決が下されるも、結局購入者の元にお金は返ってきていないようです。

ついに物件が動き出した

そんな塩漬け物件に変化が見られたのは2021年11月。ホーチミンとハノイ、シンガポールにオフィスを持つViva Landという会社が同物件を取得し、物件名を「IFCサイゴン・ワン」と命名、工事が再開されたとの報道がなされました。Viva Landは今年に入ってハノイのAグレードオフィスビル「キャピタル・プレイス」も取得している新興不動産会社で、華僑系のローカル不動産会社であるVan Thinh Phat(ヴァン・ティン・ファット)の関連会社とみられています。

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絶賛ガラス張り替え中。確かにだいぶ進んできた!

その報道がなされてからも傍からは大した動きがないように見えたものの、今月に入ってまた似たようなニュースが入ってきました。曰く、現場に作業員たちの姿が見られ、外装のガラスの張り替え作業が進んでいるとのこと。確かに残工事が進んでいるように見えます。

Tòa nhà chọc trời ‘làm xấu bộ mặt TP.HCM hơn 10 năm có chủ mới, đổi tên thành IFC One Saigon - Ảnh 1.

そして、マンション部分の販売情報もちらほらと…!2007~2008年当時1~1.5億ドン(約4,300~6,400ドル)/㎡という相場だったのが、昨今の不動産価格高騰も受けてなんと最低3.5億ドン(約15,000ドル)/㎡、さらには10億ドン(約43,000ドル)/㎡といった話まで。。「最低でも」と銘打っている平米3.5億ドンでも東京都心5区レベル、10億ドンともなると坪2000万円…都心3区でもなかなかお目にかかれない価格になってきます。いくらベトナム有数の超一等地とはいえ、10年以上も雨ざらしになってきたのが周知の事実となっている物件を、こんなクレイジーな金額を出して購入する人がどれだけいるでしょうね。。そして、もともと建設開始当時に購入していた人たちとの紛争はどうするつもりなんでしょう。このまま無事に完成を迎えても、もうひと波乱ふた波乱ありそうな気がします。

Facebookに流れてきた10億ドン/㎡のウワサ価格

ゾンビ物件はほかにも

超一等地に鎮座するIFCサイゴン・ワンほどの存在感ではないものの、ホーチミンの高級住宅地「フーミーフン」地区のすぐ裏に位置する有名な立ち枯れ物件も、今年に入って復活の兆しを見せています。ニャベ群にあるKenton Node(当初の名前はKenton Residences)という住宅案件で、こちらも僕が仕事で初めてベトナムを訪れた2012年にはすでに工事が止まっていました。もっとも、リーマンショックの影響を遅れてくらった2012~2013年当時のベトナムは、IFCサイゴン・ワンやKenton Nodeに限らず数多くの不動産物件が工事をストップしておりそれ自体は珍しい光景ではありませんでしたが…。WeWorkも入っているレタントンのSonatus Towerなど多くの案件が経済の復調とともに工事を再開し竣工を迎えるなか、ずっとダンマリを決め込んで塩漬け状態を続けていたKenton Nodeもここへきてついに動き出しました。

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こちらはベトナム不動産会社のうち最大手グループに入るノバランドが物件を取得。「ザ・グランド・セントーサ」とずいぶんとドヤった名称で販売も間近のようです。価格はやはり分譲開始当時から10年超の時を経て、2倍ほどになる模様。こちらももともとの購入者とのトラブルがずっと続いていると耳にしたことがあるのですが、ちゃんとキレイになった上での販売再開なんでしょうかね。。

おわりに

「こんな長いこと雨ざらしになってた物件誰が買うんだ」と記事中書いてはみたものの、そういう物件が何かのタイミングで復活して完成を迎え、そしてその中でいずれ人が住んだり働いたりということは実際にはよくあるようです。レタントンのSonatus Towerも長い塩漬け期間を経ながらもしっかり開業にこぎつけましたし、他の物件も長期で見るとなんだかんだどこかの時点で出来上がっています。アジア金融危機後のバンコクも相当な数の立ち枯れ物件があったようですが、同じようにしれっと開発しきって今の姿になっているようですね。

ベトナムは未着工の土地も含めると本当に塩漬けの案件が多いな、と感じます。が、何か「見えざる力」が働いていて、結果的にそれが需給のバランスを取っているのではないかと思うこともなきにしもあらず。

Tòa nhà chọc trời ‘làm xấu bộ mặt TP.HCM hơn 10 năm có chủ mới, đổi tên thành IFC One Saigon - Ảnh 7.

参考資料・画像引用元

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