ベトナム版・日本のガイドブックを買ってみたら、若干タイムスリップした気分になったよ

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※非公開にしていた過去の記事23本をこのたび一部更新して再公開しました!よかったら覗いてみてください~。

ホーチミンとハノイにはそれぞれ、ブックストリート(Phố sách)という本屋さんが並んだ通りがあります。先日、地図売ってないかなと思って出張先のホーチミンでふらっと立ち寄ってみたところ、ベトナム語で書かれた日本のガイドブックが山積みになっていたので試しに買ってみました。50%オフで約500円。コロナも収束の様子を見せ、海外旅行が気になり始めたこの機に一気に在庫処分といったところでしょうか。400ページを超える大作がセールなこともあり格安です。

ホーチミンのブックストリート。若いベトナム人でにぎわう

余談ですが、↓の記念撮影用ボードがあるように、ベトナムではグエン・ニャット・アイン(Nguyễn Nhật Ánh)という小説家が人気です。彼の書籍のうち、2010年にアセアン文学賞受賞作品にも選ばれた『幼い頃に戻る切符をください』という作品はなんと日本語で無料で読めます

あると撮ってしまいたくなる気持ち、わかります。

それでは、さっそくベトナム語版・日本のガイドブックの中身を見ていくことにしましょう。そうしましょう。

意外にも一見、内容はまとも

まず、物理的にかなり重いです。400ページ超あるうえ、ムダにいい紙を使っているためコレを片手に日本の街をぶらつくというのは正直厳しいものがあります。これはベトナムの製紙技術(薄い紙をつくれない)の問題なのかもしれません。

そして肝心の中身。最初から最後までツッコミどころ満載で笑い転げるかと期待を抱いていたのですが、開いてみるとぱっと見、拍子抜けするほどマトモな印象。日本全国しっかり網羅されており、旅先でのお作法や注意点なども外国人の視点から指摘がなされています。写真もふんだんに使われており、文字ばっかりでサッパリ読む気にならない英語のロンリープラネットよりよっぽどしっかりしています(ただし後述の通り写真には難あり。)。またこの手の本にありがちなヘンな日本語や、誤字もほとんど見られません(ちょっとはある)。これはよっぽど日本に詳しい人物の犯行、いや腕のよい編集者の功績ですね。

東京紹介パートの一部分。市場が築地から豊洲に移転したこともしっかりカバー

↓日本列島全体の地図。それぞれ北海道「島」、本州「島」、四国「島」、九州「島」と書いてあります。日本人の間でも「日本は島国だから~~」という文脈で島を意識することはあれど、各地方を島と呼ぶ感覚は日本人にとってはちょっと新鮮だったりもしますね。

おもしろパートをご紹介

とはいえやっぱりツッコミどころたくさんありますよ。お待たせしました。日本人から見て、ちょっとツボに入った点や解説を紹介していきます。

まず、写真が全体的に、古い!出版は2019年で、文字の方の情報はかなり近年までアップデートされている(消費税が5%から8%に上がったこととか、先の豊洲移転とか)ものの、使われている写真は10年近く前のものからヘタしたら20年以上前のものまで!

シン・レッド・ラインは日本では1999年公開、住友銀行は2001年まで存続。このパチンコは…いつのだ?!
脈絡なく、古田!赤いプロテクターはノムさん時代のものか?

武士のページでは「切腹」(正式名称「ハラキリ」)が、武士の名誉ある自殺方法として紹介されています。

大阪の項のコラムには、ヤクザの紹介が。大阪がヤクザの一大拠点とされており、入れ墨は伝統的なアートの形だが、それをまとう人はヤクザの一味と見なされるとの解説です。

そして、本書の中で唯一出てきた知らん人、ラフカディオ・ハーン。日本名の小泉八雲ときいてもピンと来ませんが、怪談話など日本の文化を世界に広めた人のようです。

「狭い空間に住む」というタイトルのコラム。朝、布団をしまって低いテーブルにあぐらをかいて一家で朝食をとる、徐々に西洋化した様式になってきているという記述から、こちらも20年くらい前の認識でしょうか。日本では家の価格が高く、年収の7~8倍とされていますが、2022年現在東京都では新築マンション価格が年収比13倍にまで跳ね上がってしまっています。2馬力じゃなかったらどうやって買えっちゅうねん。。

通勤文化のコラム。子供が寝る前に家を出て、子供が寝た後に帰宅。週末は疲れすぎて子供の相手ができない、という悲しい話が書いてあります。通勤者は主に男性だが、徐々に共働きも増えているという記述も、共働き世帯が専業主婦世帯を上回った1999年以前の認識に基づいていそうです。

観光名所の説明は20年そこら経っても大して変わり映えしないでしょうが、人々の生活様式はそれなりに変わるものですね。なんせ一世代弱ですもんね。

マスクなしで電車に乗れる日々はいつになることやら。あえて新宿モノリスが紹介されているのも時代を感じます

なかなか面白い「日本社会のマナー」と「日本の文化」

日本のマナーと文化に関する解説です。その通り、と思うものと若干意味不明のものと、日本人として耳の痛いものと色々あって面白いです。

  • 浴槽に浸かる前にシャワーを浴びる
  • 大皿の料理に手を付けたら、その分は食べきる(これは何でしょう)
  • 公共の場で唾を吐くのはとても行儀が悪い
  • 鼻をかむのはよいが、公共の場では避けるべき
  • 公共の場では風邪の伝染を防ぐためにマスクをする(これは時代を先取ってますな)
  • 大抵の場合、チップは受け取らない。チップの申し出は侮辱的ですらある
  • 異性間のボディタッチは一般でない。キスやハグも通常しない。夜の営みは恥ずかしいことではないが、通常隠すもの
  • 同性愛は武士の時代には人気を博したが、現在は欧米ほど支持されていない。性の抑圧の裏返しとしてコンビニで気軽にそれ系の本や漫画が手に入る(なるほど)。芸者やホステスは娼婦ではないので注意
  • 電車に乗る前はキレイに並ぶが、乗るときは前の人を押しながら乗り込む。電車が混んでて降りられないときは「降ります」と叫びながらなんとかひねり出よう
  • 儒教を背景として目上の人を敬い、多くの敬称がある(ベトナムもそうですね)
  • 第二次世界大戦までは、天皇家は日本を創建した神々の子孫とされてきた。今日では多くの人が君主制を支持していないが、右翼団体はそう発言する人を迫害する。ほとんどの日本人はいまだに天皇を尊敬しているが、昔ほどではない
  • お辞儀は日本の伝統的な挨拶で、状況により深さが変わる。外国人には求められず、握手をするか従業員のお辞儀には笑顔で返せばよい
  • 基本的に人を敬う文化なので外国人でも露骨に邪険にされることはないが、都市部以外では奇異の目で見られることも(特に肌の色が異なる人たち)。年配者の中には無意識ながら差別的な人もいて、若い人や海外経験のある人はそのような風潮を変えようとしている
  • どんなに温かく迎え入れられたとしても、「gaijin」という言葉に見られるようによそ者と見なされてしまう事実がある。日本語を流暢に話せたとしても、文化に完全に溶け込むことはできない
  • 人に会いにいくときはお土産(食べ物がよい)を忘れずに。お返しの気を遣わせるほどの過大なものは避ける。4は不吉な数字、白は葬式を想起させ(花嫁は白を着るが)、赤が祝い事の色
  • 日本人は高校で英語を学ぶが、コミュニケーションより文法に重きが置かれているため、英語でのコミュニケーションに不慣れ。日本語の発音で英語を話し、Taxiは「たくしい」、Hotelは「ほてる」、McDonalsは「まくどなるど」もしくは略して「まっく」である。マンション(英語で豪邸の意味)など、本来の英語の意味とは違う和製英語も多く存在する。意味不明の英語がプリントされたシャツを着て外国人から笑われることも
  • 日本人のYesは「言っている意味がわかった」であり「同意」ではない。「難しい」と言われたらNoの意味
  • 日本人は通常、名字→名前が一般的だが、相手が外国人の場合は逆に変換するため、どっちがどっちか要確認。相手を呼ぶときは「さん」付けで

…芸能人の釈明会見じゃないですが、「おおむねその通り」と言えるのではないでしょうか?少なくとも、日本人は外国人からこんな風に思われていると認識すべきでしょうね。

幸いなことにベトナムに住んでいると、「日本はいい国だ」「日本人はイイヤツだ」と言ってもらえることがほとんどのように思います。これはひとえにこれまでの諸先輩方が積み上げてきた信用の賜物であって、海外で生活する以上自分もある意味日本人の代表として、これまでの信用の蓄積を損なわないような振る舞いをしていかないとなと常々思う次第です。

おわりに

豊かな観光資源やこだわり抜かれた料理、なにより日本人のおもてなしの精神で旅行先として人気を集めている日本。長引くデフレと直近の円安でどんどん割安になりつつもあり、日本経済のためにもアフターコロナの観光ブーム再来が待たれるところです。そして英語はあんまりできなくても、本来のサービス精神はそのままに、よそ者だと思わせることのないくらい心のこもったおもてなしで旅行者を迎え入れていきたいですね。

そういえば結局お目当ての地図はどこにも置いてませんでした

参考資料・画像引用元

  • Cẩm nang du lịch – Nhật Bản
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