ここまでひたすら通り名に関係する記事を上げ続けてきましたが、調べ物をしているなかで面白い法令に行き着いたので、見どころをピックアップしてご紹介します。その名も、
政令:大通り・通りおよび公共施設の命名・再命名における法令の交付(番号91/2005/NĐ-CP)
これは期待できる…興奮しているのは僕だけでしょうか?変な病気にかかってしまったみたいです。
「ベトナムの通り名 命名法令」(91/2005/NĐ-CP政令)
通りの規定(第3条)
道路そのものの解釈です。要約すると、大きい順に
- Đại lộ
- Đường
- Phố
- Ngõ またはKiệt
- Ngách またはHẻm
となります。英語に直すとBoulevard→Road→Street→Lane→Alley、無理やり日本語にすると街道→大通り→通り→小道→路地といったところでしょうか。ここでは公共施設についても定義されています(公園とか橋とか教育機関とか)が、以下公共施設の記述は省略。
このそれぞれの道路の呼び方はホーチミンとハノイではクセの違いがありこれまた面白いので、どこかで特集したいと思います。(追記:特集しました↓)
すべての通りに名前をつけること(第4条)
たしかに、かなり小さい道でもていねいに名前がついていますよね。NgõとHẻmには命名してはいけないことになっており、そのNgõやHẻmが始まった場所にある家の番号が代わりにつけられることになっています(第13条)。
もし名付けられた名称に歴史的・文化的意義がない、慣習にそぐわない、社会に悪影響を及ぼすと考えられるなどの場合には名前を変更すべき、ただし慎重に(第5条)
最後の「ただし慎重に」が軽くツボです。
地名、歴史的な出来事、全国のまたは世界のあらゆる分野の偉人を選定すべし(第7条)
ここにベトナムの通り名の特徴が凝縮されていますね。「あらゆる分野」には経済・政治・文化(社会・芸術・科学)・安全保障・国防が挙げられています。外国人についても明確に規定されていますね。
名付けの詳細(10条)
第7条を細分化して規定しています。ここはできるだけ忠実に翻訳しました。
- 有名で意味深く、国家や地域の象徴的で歴史的・文化的価値を持つ地名。古代より使われ、人々の意識化に深く根付いている地名。その地域と対をなす、または特別な関係を持つ地名。
- 代表的な、政治的・文化的・社会的意味を持つ名詞。
- 歴史的・文化的遺物、文化遺産法によって列記・評価された全国的または局所的な景色の良い地点。
- 革命的な動き、歴史的出来事、特定の国または地域による侵略に対する勝利。
- 外国籍を含む偉人の名前。有名、高潔、有能、国や地域の建設・防衛に多大な功績を残す、国家に特別な貢献をもたらす、国の活動(文化・芸術・科学・工業・国家間友好の開拓)に多大な貢献を働く、人々に尊敬・認識される、といった偉人でなければならない。
異なる見解がある、または歴史的に明確でないものについては通りにつけられるべきでない。
やはり全国的には5が圧倒的に多いですね。圧倒的にレパートリーが豊富で使いやすいのがその理由だと思います。
「ハノイ千年の都」と呼ばれる歴史の長いハノイはそのなかでも1が比較的多いと言えるでしょう。旧市街36通りなんかは魚・砂糖・豆・鶏などかつてそこで扱っていた品物の名前が残っていますし、フエ通りなんかは文字通り旧都フエを表しています。
一方ホーチミンは戦勝者北ベトナム勢によって通り名の大半を変えられてしまった経緯から、政治的な意味合いを強く押し出す2や4が多めと言えます。ドンコイ(Đồng Khởi/同起)通りやカック・マン・タン・タム(Cách Mạng Tháng Tám/8月革命)通りがその典型例です。
Đại lộ(街道)は、特別な意義を持つ歴史的出来事か、最も代表的な偉人の名でなければならない(第11条)
さすがに↑は置いといて、実際のところĐại lộにつけられている人物のほうがエライのかどうか、またの機会に検証してみたいと思います。
おわりに
なかなかベトナムらしさが伝わってくる内容でしたね。行き当たりばったりにつけているように思えて、実は法律までしっかり準備されていたとは新鮮な驚きでした。
なお日本では、道路法に基づく「認定道路」のほか、都市計画法に基づく「都市計画道路名」や、街の道として親しむために名付けられた「道路名称」(「通称道路名」とかいろんな呼び方あり)があります。
明治通りや山手通り、日比谷通りなどは「通称道路名」にあたり、各自治体が検討委員会を設けたり公募をおこなったりして決定しています。正式名称は「認定道路」のほうで、東京都道305号芝新宿王子線、とか東京都道317号環状六号線、とか全然面白みのないやつです。 東京都の通称道路名いちらん
参考資料・画像引用元
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