【新米駐在員向け】出張者アテンドの心得をわりかし真面目に語るよ

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コロナ禍に入ってからハノイに赴任してきた僕にとって、今回の駐在で初めてとなる日本からの出張者アテンドを先日終えました。日本からの出張者、同時にやってきたホーチミンからの出張者もろとも、解散後に全員仲良くハノイでコロナに感染したことが発覚するというハプニングはあったものの、上司や同僚との久々の再会はとても楽しいものでした。

思えば、ホーチミン時代はコロナなんてなく、年がら年中アテンドをしていました。東京から5~6時間もあればベトナムに来れてしまうので、日本で三連休がある度に(三連休多いよ日本)家に居場所のない重役さん方が入れ替わり立ち替わり視察と称して出張にやってきたのでした。

後半2年間はひとり駐在でしたが、前半2年間は駐在経験の長い上司とふたりの事務所で、その上司からアテンドの極意をさんざん叩き込んでもらいました。当時学んだことのうち、5年以上経った今でも大事だなと思うことを、現在の自分の言葉でまとめてみました。いつか誰かの役に立つといいなぁ。

当然のことながら会社の業種や社風、出張目的、出張者のポジションや自分との関係性などによってアテンドの仕方やポイントはまったく異なってくるので、あくまで一例としてご覧いただけたら幸いです。ざっくり、30歳前後の人がわりかし少人数で、街中の視察や面談をメインにアテンドすることを想定して書きます。工場内の視察とか、ずっと社内で会議続きとかの場合はあんまり当てはまらないかもしれません。。

そういえば、「アテンド」って今にわかにトレンドワードですね。ガーシーchおもろいわ。

空港の発着掲示板って、なんかイイですよね

出張者アテンドは駐在員の立派な仕事のひとつ

正直、毎月のようにいろんな部署の人(しかもエライ人)に出張してこられると駐在員としてはたまったものではありません。準備は大変だし、アテンド中は普段の業務がそっちのけになります。ペーペーの場合、その間取引先との面談なぞあろうものなら、加えて議事録の作成なんかも降りかかってくることになります。

ですが、出張アテンドは全力で取り組むものと思って臨みたいところです。なぜなら、大体は本社のエライ人がその短期間であなたのことを良くも悪くも評価するからです。キッチリやり遂げることができれば「こいつはこれからも安心して任せられるな」と思ってもらえるし、逆に終始バタバタしていれば「どうせ俺のいないところでも万事こんな具合なんだろうな」と早々と見切りをつけられてしまいます。そして、その評価は恐らく正しいでしょう。自分の一挙手一投足が見定められていると思って、万全の体勢で取り組みましょう。

ビシッときめたりましょう

30分単位でスケジュールを組み、当日はすべて白紙に戻そう

すべては事前準備です。30分単位、場合によっては15分単位で綿密なスケジュールを立て、最適なルートを構成しましょう。極力、事前に当日と同じルートをあらかじめ回り、訪問先はせめてビルの階数までは押さえておきます。間違ってもアテンド当日が初めてなんてことにならないように。都市部は時間帯によって移動時間が軽く倍・半分になったりするので、その辺の感覚に自信がない場合は時間帯に合わせてルートを辿っておくことが重要になってきます。

ホテルや会食場所の下見は必須です。喫煙・禁煙、アルコール提供の有無はもちろんのこと、最近はコロナで海外からの入国者には特定のフロアしか泊めないとかいう謎ルールや時短営業などのトラップもあるので特に注意が必要です。

出張者の嗜好も事前に秘書から仕入れておくのがベターです。↑の酒タバコや食事の好み、せっかく時間をかけて出張にきたのだから最大限時間を有効に使いたいとツメツメの行程を望む人もいれば、せっかく日常から開放されてるんだから出張中くらいはのんびりしたい、もしくは溜まった仕事を処理する時間も間に挟んでほしいという人もいます。この行程の密度を間違えると、気づかない間に出張者に大きなストレスを与えることになります。事前にそのへんの情報が取れなかったとして、前日や当日の朝イチに一日の行程を大まかに伝えてあげるだけでも、だいぶそのストレスを軽減することができます。

そして逆説的ですが、当日はその綿密に立てたスケジュールをすっぱりと捨て去りましょう。アテンドに変更・トラブルはつきもの。出張者の気まぐれで行き先は簡単に変わりますし、ましてやここはベトナム。相手が時間通りに来ない、ドタキャン、渋滞、臨時休業などなどなどなど、不測の事態は「必ず」起こると思っていたほうがよいでしょう。用意周到に、しかし臨機応変に。せっかく頑張って立てたスケジュールだからと、それに囚われすぎると次善の策が見えなくなります。当然、あらかじめ他の選択肢も想定しておいた方がよいのは言うまでもありません。

まとめると...
・できるだけ詳細なスケジュールを立て、事前に自分でルートを回っておこう
・ホテルや会食場所は必ず下見をして、その場で必要な情報を確認しよう
・出張者の意向に極力寄り添えるよう、あらかじめその人の好みを押さえておこう
・当日は何が起こってもとにかく臨機応変に対応しよう
うまく言えませんが、立てたスケジュールは捨て去ってもどこかで必ず役に立ちます

アテンドのミソは「道、メシ、歴史」

駐在員たるもの、その国・その街を社内の誰よりも知っている存在でなければなりません。その地にどれだけ根付いているかを出張者は見ています。

「道」

ベトナムでは大部分が車移動になりますが、ドライバーに行き先を告げたからといって気を抜いてはいけません。出張に合わせてハイヤーを手配する場合は特に、ドライバーはびっくりするほど行き先やルートを知らないことがあります。車移動が疲れるという出張者は多く、道を間違えたりするとひときわ無能感が出てしまうので、道程は常に自分でチェックするようにしましょう。

また、屋外であろうが屋内であろうが、歩いて行動する場合は必ず自分が先頭を歩きましょう。相手が誰であろうがアテンドに自信がなかろうが、案内役はあなたなのです。アテンドする側が複数であっても目下のあなたが率先して前を歩きましょう。うっかり道を外れそうなときには、先輩がそれとなく軌道修正してくれるはずです。そして大方の場合は出張者も黙ってあなたについてきます。もちろん、後続をちぎって独走態勢に走るのは言語道断ではあります。

かくいう僕も、当時の上司から「お前が先を歩け!」という耳打ちを最も多く喰らいました。ついつい他者に道を委ねてしまいがちですが、そこでの「遠慮」はただの「職務放棄」だと今は思っています。

地図はこっそり見ましょうな。
「メシ」

食事は海外出張の醍醐味のひとつですが、同時にドツボに嵌まりやすい分野でもあります。出張の満足度を大きく左右するイベントでありながら、同時に出張者の嗜好も大きく反映してくる部分であり、さまざまな変数があなたを悩ませてきます。ベト飯がいいのか和食なのか、外国人が集まる高級店なのか現地人で賑わうどローカル屋台なのか。出張者のオゴリなのか拠点持ちなのかワリカンなのか、いろんなお酒を飲みたいのかビールがあればいいのかノンアルなのか。直前の場所との距離は遠くないか、2軒目はあるのかないのか。それらを踏まえつつ、選択肢を3つほど与えて選ばせるという形をとりながらも自分がベストだと思うお店にそれとなく誘導できると最高です。その際「この店はこの料理がオススメなんです」とか「この店はとにかく眺望がいいんです」とかはっきりした理由があるといかにも駐在員ぽいです。

蛇足ですが、ホーチミン時代に何度もアテンドした当時の社長ははっきりと「俺はメシ屋のチョイスで駐在員の良し悪しを判断する」と公言し、僕はお店探しのために旅程の2日前にハノイに前入りしてひたすらお眼鏡にかなうお店を探し歩いたことがあります。ちなみに彼の正解は「どんなに汚くてもいいから安くてうまくて現地の人しかいない店」でした。いろんな意味で社長がそれでいいのかとは思いつつ、同時に現地にどけだけ根付いているかを判断するという観点では本質を突いていたなと思います。結果的にそのアテンドではそれなりの合格点をもらうことができたのですが、彼が翌日お腹を壊し視察が半日キャンセルになったのはいい思い出です。

海外でも日本食しか食べない出張者もいるよ!
「歴史」

会社のなかでも高いポジションにいる人は、年齢もそれなりに高いのが一般的です。特に経営層に近い人は歴史が好きな傾向にある、というのが僕の印象です。歴史に絡めた小ネタを随所に挟むと会話にも花が咲きますし、実際街の見え方が変わってくるものです。

またそういう経営層の人たちは概して好奇心旺盛な人が多く、街中のあらゆる景色にアンテナを張り巡らせています。直接の業務に関係ない質問が矢のように飛んでくるたびに「それはわかりません」を連発していたら、そういうアンテナが利かない奴だという判断をされてしまいます。全ての質問に完璧に答えることは不可能ですが、歴史の基礎知識があればそれをヒントにそれらしい答えを導き出すことができます。

何もベトナムの歴代王朝を順番に覚えたり、年号を丸暗記したりする必要はありません。じゃあどうするかって?そんなあなたのためにこのブログがあるのですよ。必要なのは学術的な知識ではなく、ちょびっと出張が楽しくなるようなちょっとした豆知識です。これからも「まめべと」をどうぞご贔屓に!

まとめると...
・運転手に任せきりにせず、道順に目を光らせておこう
・歩きの場合は自らが一行をリードしよう
・食事はあらゆる要素を考慮したうえで候補を3つくらいに絞り、ポイントを明示してオススメしよう
・歴史を小出しに、より国と街に興味を持ってもらおう

出張者アテンドはメリットもたくさん

そんなこんなで一日中ずっと気を張りっぱなし、誰よりも早く起きて出張者の宿泊先に迎えに行き、夜はお店をはしごして帰るころには後部座席でガーガー寝ている出張者をホテルまで送り届け、自分が帰宅した頃には午前2時。その日に出されたリクエストを翌朝までに整理して、また朝イチから臨戦態勢。なんで俺だけこんな目に?と思ってしまうこともありますが、イヤなことばかりでもありません。

まず、日本の本社にいるときはその姿を見ることすらなかなかないような重鎮さんにお目にかかれる機会としては格段に増えます。当然海外出張には少なくないお金がかかっているわけで、出張する価値のある人しか基本的には来ないわけです。僕自身のケースでいうと、連結社員1万人超を抱える社長、副社長、筆頭取締役などを、それぞれ複数回アテンドする経験ができました。自分とはかけ離れた視座でものごとを見通す人の考えはとても勉強になりますし、シンプルに楽しいと思うことが多かったように思います。

そんなはぐれメタルたちが、場合にはよりますが、普段日本でバリバリの「オン」状態であるときと比べると若干の「オフ」になっているケースが多く、比較的優しく接してくれる海外出張はある意味ボーナスタイムです。そんな状態で朝から晩まで連日同じ時間を過ごすことになるので距離は否応なしに縮まることになり、役員なりの悩みだったり若い頃の苦労だったりが期せずして聞けたりなんかもします。また、お互い業務とはいえ出張者からすれば「何から何までやってもらっている」という感覚にどうしてもなるため、普段どんなに厳しい人でも例外なく「ご苦労だった、ありがとう」と言って帰っていきます。

同僚や年下社員のアテンドの場合は気楽なものです。来たるエライ人アテンドの実験台にさせてもらい、アテンド側からは気付かない指摘をしてもらうこともできます。日頃ひたすら貯め込んできた知識を出張者に話して聞かせると、自分の頭の中もより整理されますし、何より自分の経験値の蓄積を身をもって実感できると思います。

そうして得られた関係性や経験は、必ずや将来に活きてきます。僕の場合だと、海外から帰ってきた(そのときは長期出張帰り)際に日本で社長と食事をする機会があり、そこで次の異動先の希望を直接伝えたらすんなり叶えてくれたことがありました。いろいろ思うところがあり退職を決めた際には逆に社長、副社長それぞれに直接その旨を伝えに行くハメになり超憂鬱でしたが。。

せっかくだから楽しもう

見返りを求めてアテンドをするというわけではないですが、得るものは相応にあるのが出張者アテンドだと僕は思っています。企画力や先読み力、とっさの対応力や細かい気配りなど仕事の本質が凝縮された業務だとも思うので、一度手を抜かずに取り組んでみることをオススメします。

最後に。せっかくなので、あなた自身もアテンドを存分に楽しみましょう!メンドクセーと思ったら、アテンドはどこまでいってもメンドクセーです。

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