【〇〇さん通り】けっこうあるある、敬称付きのベトナム通り名 - まめべと

ベトナムの通りの名前はこれまでご紹介の通り人の名前がついていることが多いのですが、基本的には「呼び捨て」ですよね？「ホーおじさん通り」とはならないわけです（ちなみにホーチミン通りはない、という記述が多いですがハイズオン省にあります。新しくできたのかな…。ホー・チ・ミンの本名であるNguyễn Tất Thành通りもホーチミンなどにあります）。

「呼び捨て」通りが大半を占めるなか、実は「〇〇さん通り」が少なからず存在します。ベトナム語では“ông”（男性）と“bà”（女性）が敬称にあたります。今回はその一例をご紹介したいと思います。

1メートルのお胸を肩に背負って戦った女傑～バー・チェウ（Bà Triệu/婆趙、226～248）
ベトナム最強姉妹～ハイバーチュン（Hai Bà Trưng/二婆徴、14～43）
地名＋敬称という珍しいパターン～バー・フエン・タイン・クアン（Bà Huyện Thanh Quan/婆縣青關、1805～1848）
ハイフォンの開拓者～レ・チャン（Lê Chân/黎真、20～43）
珍しい男性の敬称～オン・イッ・キエム（Ông Ích Khiêm/翁益謙、1829～1884）
おわりに

1メートルのお胸を肩に背負って戦った女傑～バー・チェウ（Bà Triệu/婆趙、226～248）

漢（中国）の支配に反抗した指導者で、身長が九尺（3m前後）で乳房が三尺（1m前後）あり、鎧に収まらないので肩に背負って戦ったというとんでもないプロポーションの持ち主であります（あくまで伝説です）。ベトナム人だけでなく現地の漢人をも巻き込み乳を力を振り絞って戦ったものの、数か月の激闘の末にわずか23歳（おそらく数え）で命を落としました。Bà/婆だからといってBBAだったわけではありません。

ホーチミンにもホクモンのほうにバーチェウ通りがありますが、より有名なのはホアンキエム湖からVincom Ba Trieuまで南北に流れるハノイの通りですかね。

Vua Tam Quốcという2016年にリリースされたベトナムのゲームで描かれた美しいバー・チェウの画像を貼っておきます。

ベトナム最強姉妹～ハイバーチュン（Hai Bà Trưng/二婆徴、14～43）

きました本命。姉チュン・チャック（Trưng Trắc/徴側）、妹チュン・ニ（Trưng Nhị/徴弐）の「ふたりのチュンさん」という意味ですね。バー・チェウからさかのぼること約200年、漢からの支配に反乱を起こし、わずか3年間ではあったものの漢からの独立を果たしたベトナムの英雄です。姉チャックの夫ティ・サック（Thi Sách/詩索）が処刑されたことに怒って反乱を起こした、という伝承もあります（史実とは異なる）。※Haiは正確には台に二と書く

ホーチミン、ハノイともに目抜き通りの名前を飾る、ベトナムでも最も名の知れたふたりでしょう。

地名＋敬称という珍しいパターン～バー・フエン・タイン・クアン（Bà Huyện Thanh Quan/婆縣青關、1805～1848）

阮朝時代の詩人で、本名はグエン・ティ・ヒン（Nguyễn Thị Hinh/阮氏馨）。バー・フエン・タイン・クアンは彼女のペンネームであり通称で、夫のルー・グエン・オン（Lưu Nguyên Ôn）がタイン・クアン県（Huyện Thanh Quan）の役職についていたため、周囲からそれぞれÔng huyện Thanh Quan・Bà Huyện Thanh Quanと呼ばれていたようです。ミス板橋、みたいな感じでしょうか。知らんけど。

彼女の名を冠した通りは、ハノイでは大使館街となっており、厳かな雰囲気が漂っています。ホーチミンでは3区にあり、南ベトナム時代から今日まで続く通り名となっています。少し前は日系企業の集積があり日本料理店もけっこうあったのですが、今はだいぶ少なくなっているみたいですね。

ハイフォンの開拓者～レ・チャン（Lê Chân/黎真、20～43）

ハイバーチュンの蜂起で活躍した将軍として知られるとともに、ハイフォンを開拓・開発した人物としても有名で、ハイフォンには彼女の銅像が立っています。同市の中心部の区名にもその名が冠され、最近ではイオンモールが出店したことでも話題になりました。

ホーチミンにはBà Lê Chânという通りが1区のはずれにあります。

珍しい男性の敬称～オン・イッ・キエム（Ông Ích Khiêm/翁益謙、1829～1884）

阮朝時代の将軍。非常に優秀であり、15歳で学士を取得後は各地で国の防衛を任されますが、勝気な性格で人のいうことを聞かずに職を解かれたりもしています。

ホーチミンでは11区のダムセン公園のすぐ近くに、ハノイではバーディン区のホー・チ・ミン博物館付近に通っています。女性の敬称がついた通りはほかにも割とあるのですが、男性の敬称が通り名になっているのは珍しく、この1件しか見つかりませんでした。今後も探してみようと思います。

おわりに

そのほか、敬称付きの人物名は橋や運河の名前との相性がよいようで、Cầu Ông Lãnhなど各地に「○○さん橋」「○○さん川」を見ることができます。

日本にはないだろと思って探したみたら、あるんすね。。山口県下関市に「乃木さん通り」が、新潟県出雲崎町に「良寛さんの心の道」が、東京都北区に「りゅうのすけくん通り」が、架空の人物でいえば東京都世田谷区などには「サザエさん通り」があります（他にもある）。乃木希典関連はバリエーションが多く、「乃木さん通り」「乃木通り」「乃木将軍通り」「乃木神社参道」「乃木遊歩道」「乃木将軍墓道」と46通りに迫る勢いです。