一時帰国の強制隔離期間中5本目の記事になります。先ほどメトロの記事で力を使い果たしたので、最後はライトなやついきまっせ。序盤はベトナムをそれなりに知っている人なら当たり前に知っている話ですが、後半は知らない人の方が圧倒的に多いはずです。僕もビックリしたのでみなさんに共有したいと思います。
ここベトナムでは、ベトナム人の会話はベトナム語です(当たり前のことをあえて日本で言ってみました)。そしてベトナム語には「人称代名詞」なるものが多用されます。なんのことかというと、「わたし」と「あなた」を相手の立場によって使い分ける言葉の使い方です。
日本語の場合、例えば男性の一人称の場合は相手の立場や相手との関係性によって「わたし」「わたくし」「俺」「僕」「自分」「わし」などが挙げられ、二人称は「あなた」「おまえ」「君」「てめえ」などが考えられます。ほかにも「さん」「ちゃん」「くん」「さま」など名前と一緒に使うものもありますね。
ベトナムにはこのような人称代名詞が多数あるうえ、それがかなり厳格に使用されています。ただでさえベトナム語を話すのが億劫な僕ですが、この人称代名詞があってさらにベトナム語で話すのを躊躇してしまいます。ということでまずは基礎編から。知ってる人は飛ばしてください。
【基礎編】とにかく anh, chị, em を覚えよ
「わたし」や「あなた」を呼び分ける言葉としては、em, anh, chị, cô, chú, bác, ông, bàなどが使われます。体系的に説明するとかえってややこしくなるので例を使うと、
- 年下の自分が年上の男性に話すとき:Em cảm ơn anh.(cảm ơnはありがとうの意味。[感恩])
- 年上の男性である自分が年下の人に話すとき:Anh cảm ơn em.
年上の女性は場合はanhの代わりにchịになります。年下であるemは男女共通です。
- 年上のおねえさまを呼ぶとき:Chị ơi!
- 年下の人を呼ぶとき:Em ơi!(店員さんを呼ぶときに必ず必要になる在住者必須ワード)
自分よりも歳がだいぶ離れてくると、anhの代わりにchú(男性)、chịの代わりにcô(女性)が使われます。歳がさらに離れていたり、フォーマルな場だったり敬称を使う場合などシチュエーションによってこれがさらに複雑になってくるのですが、マジメにベトナム語を勉強するつもりがないなら、仕事でベトナムに来ている大部分の日本人の話し言葉として使う分にはanh, chị, em、あとしいて言えば無難な一人称tôi(「わたくし」に近い)の4つだけでよいかと思います。
というのも、例えば30歳くらいの人が50歳くらいの男性に対して教科書的に呼ぶとすればanhではなくchúなのですが、よほど親しい間柄でない限りはこの場面でもchúではなくanhが使われます。女性の場合は後で述べるように若く扱ったほうがよいので、年上なら基本chị一択でも大きな問題はないです。
以上、強引に基礎編を終わります。ちゃんと知りたい方は「人称代名詞 ベトナム語」で。
【実践編】わからないときは、同性には自分が下に、異性には女性が下に
さて、anh, chị, emの概念についてはよくお分かりいただけたかと思います。問題は、「相手が自分より年上か年下かわからないときにどうするか」です。これはすぐ年齢を確認したがり、それを確認するやいなや即呼び方を使い分けるベトナム人においても初対面の際には必ず直面する問題です。
正解は見出しの通り。
- 歳が上か下かよくわからない同性には保険をかけて自分が下(em)に
- 自分が男で相手の女性がひょっとしたら年上であっても相手を若い年下ふう(em)に
- 自分が女で相手の男性が若干年下っぽく見えても、男を立てて相手を上に(anh)に
なので、初対面で男性同士がお互いエムエム言っていたり、さすがにお前より年上だろっていう女性にも男がemって言ってたりする光景を見ます。そして、間柄が続きそうな場合には速やかに、しかしそれとなく相手の年齢を探っていきます。
例外として、店員さんと客など明らかに立場が違う場合には多少年上であってもEm ơiで問題ないですし(僕はやりませんが)、なかには仕事上戦略的に本来の立場とは異なる呼び方をあえて使う場面もあったりします(下に偽る場合も上に偽る場合も確認済。それとなく歳がバレていても空気を読んでその呼称は続いていく。。)。
【応用編】交際に発展すると自動的に男が上・女が下の呼び方になる
これは僕もつい最近まで知りませんでした。年上の女性が年下の男性と付き合うこと自体がめちゃありふれているというわけでもないようで、ベトナム人の間でも珍しいとまではいえないが特殊ケースではあるようです。さらには、厳格なカップルによっては年上の奥さんが年下の旦那に対して敬語を使う(言葉の最後に”ạ”をつける)ケースすらあるようです。
つまり、年上の女上司が年下の男の部下と付き合うと、仕事の場ではchịとemで呼び合い、プライベートの場ではそれが逆転することになります。うっかり仕事場でプライベートの呼び方をしてしまうもんなら、職場の人たちにあっさりバレてしまうというわけです。空気感でいったら日本人の場合でもタメ語や呼び捨てだったりで似たようなものかもしれませんが、まあ細心の注意を要することは確かです。
ここでも気になるのはその呼び方が変わるタイミングです。決まりはないそうですが、「交際開始前後のどこか」ということのようです。「Chị ơi, anh yêu em.」なんて告白したらめっちゃカッコイイ(yêu=love)!
…調べてみたら同名の演歌が出てきました。人と違う人生であっても、たとえ周りに笑われてバカにされても、君への愛は変わらない的な歌詞です。やっぱり特殊なケースなんすね。。(特に過去は)
おわりに
この記事のタイトルを思いついてから、ミスチルの「ありふれた Love Story ~男女問題はいつも面倒だ」が頭から離れずそれを聴きながら書いてます。タイトルだけ聞いてピンときた方はたぶん僕と同年代です。ぜひハノイで一緒にお酒を飲みましょう。
画像引用元:kenh14.vn
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