ホアンキエム伝説の主人公は偉大な救国者~レ・ロイ(Lê Lợi/黎利)

ベトナムの通り名

ホーチミンの高島屋が構える1区のレロイ通り。都市鉄道1号線の工事が着々と進んでいますね。ベンタイン市場を挟んで続くレライ通りはなんだか名前が似ていますが、何か関係があるんでしょうか?

ハノイのホアンキエム湖沿いを走るレ・タイ・トー通り。実はレ・ロイとレ・タイ・トーは同一人物です。しかもホアンキエム湖とめっちゃ関係の深いお方なんです。ちなみにハノイのレ・ロイ象はちゃんとレ・タイ・トー通りに面して立っていますが、ホーチミンのレ・ロイ象はなぜかレロイ通りからかなり離れた6区にいらっしゃいます。

地下鉄工事が落ち着いてオペラハウスまでつながるホーチミンのレロイ通り

データ

  • 名前:レ・ロイ(Lê Lợi/黎利)
  • 生没年:1385~1433
  • 時代:第四次北属期~後黎朝
  • 出身:タインホア
  • 名前を冠した通りの所在地(Lê Thái Tổ含む):1区他(ホーチミン)、ホアンキエム区他(ハノイ)
  • 一言でゆってよ:亀に剣を返した人

10年の独立運動の末、明からの独立を勝ち取る

当時、明(中国)はベトナムを併合し、民衆に言語や服装・髪型まで中国式を強制するなど、徹底した同化政策で国を支配していました。私有財産は没収、重税を課され、なかには明で強制労働させられる人まで。当然民衆の不満は高まり、明に抵抗した反乱運動がいくつも起こったものの、いずれも鎮圧されています。

地方の小豪族だったレ・ロイは18人の同志とともに、「祖国と国民を救うため」明への抵抗を始めます。当初は敗戦を重ねたものの、レ・ロイはひたすらにベトナムの独立を掲げ、ベトナムの民衆のみならず明軍の指揮下にあるベトナム人組織の地方軍をも味方につけたことで、戦局を盛り返していきました。当初わずか18人だった兵力は、終盤には20万人にまで膨れ上がっていました。そしてレ・ロイ軍は10年間にわたる闘争のすえ明の撃退に成功、明からの独立を勝ち取ります。

独立したレ・ロイは後黎朝を創始しましたが、王位に就いたのは5年。レタントン通りで知られるレ・タイン・トン(Lê Thánh Tông)の父であるレ・タイ・トン(Lê Thái Tông/黎太宗)に早々に譲ると同年48歳で死去してしまいます。

亀さんに素直に剣を差し出すレ・ロイさん(下記参照)

グエン・チャイとレ・ライ~つながっとるやん

グエン・チャイ(Nguyễn Trãi/阮廌)は以前紹介の通り、レ・ロイの名参謀として活躍し、軍と明の緩衝材となってベトナムに平和をもたらしました。レ・ライ(Lê Lai/黎来)はレ・ロイの同郷で、挙兵のときからレ・ロイに従った人物。レ・ロイ軍が明に包囲された際にレ・ロイの身代わりを買って出て軍を救った英雄として、「献身果敢の大教訓」とベトナムの教科書では教えられているそうです。

ホーチミンでは、レロイ通りはベンタイン市場でレライ通りへ繋がり、レライ通りはレライ公園を挟む三叉路でグエンチャイ通りと接続します。史実のようにぴったりとは繋がっていませんが、現代においても3者の繋がりを感じることができますね。またレ・ライの名はハノイではハノイ市人民委員会や外務省、ベトナム国立銀行、リータイトー公園などの要所を通る道につけられています。

剣を還す~ホアンキエム伝説

ハノイ有数の観光スポットであるホアンキエム湖には、ムーンライト伝説より有名なホアンキエム伝説というものがあります。漁師が網に引っかかった見事な剣をレ・ロイに献上し、レ・ロイがたまたまガジュマルの木の上で見つけた剣の柄を合わせてみるとそれらがぴったりとはまり、それからというものレ・ロイ軍は明に対して快進撃を続けたといいます。剣の名前は順天(Thuận Thiên)、英語でいうとHeaven’s Will。なんかラノベのタイトルっぽい。。

そして王朝を建てた翌年、レ・ロイがいまのホアンキエム湖を舟で渡っていると海の神の使いである亀があらわれ、その剣を竜の神に返してほしいと告げます。剣を受け取った亀はそのまま湖深くと帰っていき、その後この湖は還剣(ホアンキエム/ Hoàn Kiếm)湖と呼ばれるようになったとさ。海の神の使いなら竜の神じゃなくて海の神に返させんかい。

ちなみに、ホアンキエム湖の大亀はレ・ロイの名前にちなんでRafetus leloiiという学名がつけられていますが、最後の一匹が惜しまれながら2016年に亡くなったとされています。この亀さん(スッポン)たちはその姿を見ることができると非常にご利益があるとして、ベトナム人からはとても大切にされてきました。ホアンキエム湖のスッポンは大切にするくせに、普通のスッポンはめっちゃ食べるベトナム人。牛を敬うインド人を見習えインド人を。※ただし、僕は旅先のインド(しかもヒンドゥー教の聖地バラナシ)で思いっきり牛をぶん殴っている無邪気な少年を見たことがあります。

ホアンキエム湖の玉山祠に展示してある亀さんの剥製

参考資料・画像引用元

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