銅像、立像、神像、仏像。像を見るとなぜか写真を撮ってしまうのは僕だけでしょうか。
ハノイ市内を走り回っていると、けっこういろんなところに像が立っているのを見かけます。今回はおそらく日本人初の試みとなる「ハノイ市内の像シリーズ」という相当マニアックなところを攻めてみたところ、予想以上にバラエティに富んだラインナップとなりました。
- ハノイ千年の生みの親~リー・タイ・トー(Lý Thái Tổ/李太祖、974~1028)
- 功績はでかいが像はまじでちっこい~レ・ロイ(Lê Lợi/黎利、1385~1433)
- ベトナム史上最も偉大な将軍~グエン・フエ(Nguyễn Huệ/阮恵、1753~1792)
- 若くして散った革命家~リー・トゥ・チョン(Lý Tự Trọng、1914~1931)
- 北ベトナムの初代&次代国家主席~ホー・チ・ミンとトン・ドゥック・タン
- ホーチミンでもおなじみの2大細菌学者~パスツールとイェルサン
- 今では珍しい現存種~ウラジーミル・レーニン(Влади́мир Ильи́ч Ле́нин、1870~1924)
- いわゆるガンディーとは無関係~インディラ・ガンディー(Indira Priyadarshini Gandhi、1917~1984)
- カストロをも動かした~ホセ・フリアン・マルティ・ペレス(José Julián Martí Pérez、1853~1895)
- ドミニカ初代大統領~フアン・ボッシュ(Juan Emilio Bosch Gaviño、1909~2001)
- ベトナムで最も人気なロシア人作家~アレクサンドル・プーシキン(Александр Сергеевич Пушкин、1799~1837)
- 番外編① ベトナム人にとっては学業の神様~孔子(紀元前552~前479)
- 番外編② ハノイ最大の銅像~玄天鎮武神
- まとめ
ハノイ千年の生みの親~リー・タイ・トー(Lý Thái Tổ/李太祖、974~1028)
まずはいちばんのメジャーどころから。ベトナム初の長期王朝である李朝を創立し、ホアルー(Hoa Lư/華閭)からはじめてタンロン(Thăng Long/昇龍)へ都を移した「ハノイ千年」の生みの親。
ホアンキエム湖からほど近いリータイトー公園に、高さ9m、重さ12トンという巨象が立っています。ちなみにこの公園、最初はアンナン・トンキン理事長官を務めたポール・ベールの名を冠してポール・ベール公園でした(彼の銅像もあった)が、その後チーリン公園(仏像にかわった)、インディラ・ガンディー公園(像があったか不明)と名前をかえ、2004年にハノイ開放50周年を記念して今の形になりました。
功績はでかいが像はまじでちっこい~レ・ロイ(Lê Lợi/黎利、1385~1433)
ホアンキエム伝説の主人公にふさわしく、ホアンキエム湖のほとり、レタイトー通り(レ・タイ・トーはレ・ロイの別称)沿いにちっこいレ・ロイ像が立っています。
ベトナム史上最も偉大な将軍~グエン・フエ(Nguyễn Huệ/阮恵、1753~1792)
ドンダー区にあるドンダー公園にグエン・フエの像があります。高さ15m、重さ200トンで、実際見てみると数字以上にデカく見えます。
若くして散った革命家~リー・トゥ・チョン(Lý Tự Trọng、1914~1931)
わずか17歳で処刑された革命家。同志であるファン・ボイ・チャウ(Phan Bội Châu/潘佩珠)を守るため、白人の警察官に危害を加えた罪で捕らえられ、拷問の末にギロチンで処刑されます。当時のフランスの統治下では人頭税をかけるため16歳で成人扱いとしており、リー・トゥ・チョンにも容赦がなかったようです。
西湖南側のリートゥチョン公園にその像があります。ホーチミンにお住まいの方は、レタントン通りの一本裏手の通りとして名前を聞いたことがあるかもしれませんね。レタントン通りと逆の一方通行の道路です。ちなみにこの通りは、もともとは阮朝初代皇帝であるグエン・フック・アイン=嘉隆帝の名を冠してGia Long通りと呼ばれていました。
北ベトナムの初代&次代国家主席~ホー・チ・ミンとトン・ドゥック・タン
ベトナム民主共和国(北ベトナム)の初代国家主席ホー・チ・ミンと、第2代国家主席トン・ドゥック・タン(Tôn Đức Thắng/孫德勝、1888~1980)ですね。ふたりが手を取り合っている銅像がドンダー区のトンニャット公園(統一公園)にあります。ホーチミン1区トンドゥックタン通り沿いにはトンドゥックタン博物館があり(つまらないらしい)、7区にはトンドゥックタン大学もあります。
蛇足ながら、トン・ドゥック・タンを調べている途中で出てきたトンドゥックタン大学3年生のĐặng Nữ Linh Chiさんが非常におキレイでしたので、下記リンクを貼っておきます。
ホーチミンでもおなじみの2大細菌学者~パスツールとイェルサン
パスター通りで知られるルイ・パスツール(Louis Pasteur、1822~1895)と、ヤーシン通りであまり知られていないアレクサンドル・イェルサン(Alexandre Yersin 、1863~1943)の細菌コンビです(いじめられっ子コンビみたいだな…)。前者はパスター公園(Vườn Hoa Pasteur)、後者はヤーシン・ガーデン(Yersin Garden)に像があり、もともとはパスツール研究所の建物でもあった衛生伝染病学研究所に隣接してお互い目と鼻の先に位置しています。どっちも日本語の情報が一切ない。。
なお、上記Yersin Gardenに加えて、実はハノイ医療大学の中にもうひとつYersin Gardenがあります。胸像だけでは飽き足らず、全身像をご覧になりたい方はぜひ大学構内まで。
今では珍しい現存種~ウラジーミル・レーニン(Влади́мир Ильи́ч Ле́нин、1870~1924)
ロシアの革命家、政治家、哲学者でソビエト連邦の初代指導者。ベトナムへはマルクス・レーニン主義として浸透し、2021年の党大会においてもその思想を堅持していくことが再確認されています。
国旗掲揚台やベトナム軍事歴史博物館と向かいにあるレーニン公園には、今では世界的に数少ないレーニン像が立っています。社会主義の崩壊とともにレーニン像は世界各地で引き倒され、ウクライナでは5,500体あったのがひとつ残らず撤去されたといいます。いや、1コか2コは残ってるだろう!
いわゆるガンディーとは無関係~インディラ・ガンディー(Indira Priyadarshini Gandhi、1917~1984)
インド初の首相であるネルーの娘で、インド初の女性首相になった政治家。自身の暗殺後、息子が首相の座を継ぐも、彼も暗殺されています。今回調べるまで、勝手にメガネの痩せたおっさん(マハトマ・ガンディー)と勘違いしていて、像が女性でびっくり。それどころかマハトマ・ガンディーとの血縁関係すらないという。
(追記:インド大使館の敷地内で、マハトマ・ガンディーらしき人物の像を発見)
彼女の胸像はバーディン区のインディラ・ガンディー公園の中にあります。
カストロをも動かした~ホセ・フリアン・マルティ・ペレス(José Julián Martí Pérez、1853~1895)
キューバの著作家、革命家。スペインとの戦闘で戦死、キューバの独立を見届けることなくこの世を去ったキューバ史における英雄らしく、カストロにも彼の思想を受け継いでいるようです。キューバ、行ってみたいなぁ。
ヒルトン・ハノイ・オペラの近くの小さな公園にポツンと彼の胸像があります。
ドミニカ初代大統領~フアン・ボッシュ(Juan Emilio Bosch Gaviño、1909~2001)
ドミニカ共和国の政治家で、歴史家・作家・教育者としても活動。1963年にはドミニカの初代大統領に就任しています。ボッシュはホー・チ・ミン主席の指導によるベトナムの民族解放事業を完全に支持し、両国の友好協力関係に土台を作り出した人物であると像の除幕式で語られています。
設置されているのはバックトゥリエム区のホアビン公園。公園自体が新しく、除幕は2018年と比較的最近です。
ベトナムで最も人気なロシア人作家~アレクサンドル・プーシキン(Александр Сергеевич Пушкин、1799~1837)
ロシアの詩人、劇作家、小説家であり、ロシア近代文学の創始者とみなされている人物。こちらもボッシュ像のあるホアビン公園に、2021年に建てられました。僕は今回はじめてこの人のことを知りましたが、なんと世界40か国以上にプーキシン像があるそうです。まじか。ベトナムだけなら、ドラえもんの人気ぶりからして藤子・F・不二雄もワンチャン像になれそうな気がする。。
彼は決闘(1対1で銃で撃ち合う)において異常な強運を発揮し、相手の弾が全然当たらなかったという逸話がいくつもあるのですが、結局最終的には決闘で負った傷が原因で死亡しているというなかなかクレイジーなお方です。
番外編① ベトナム人にとっては学業の神様~孔子(紀元前552~前479)
「子 曰く」から始まる論語で有名な孔子。ベトナム語ではKhổng Tửと呼ぶようです。孔子が説いた儒教はベトナムにも中国の支配とともに紀元前から流入し、現代まで定着しています。
孔子像はバーディン区の文廟の中にあります。文廟はもともと孔子を祀る廟堂として建立されたもので、ベトナム最古の大学があった場所でもあります。いまではベトナム屈指の合格祈願スポットとして、受験シーズンになるとベトナム人の受験生の方々がお祈りに来るそうです。
番外編② ハノイ最大の銅像~玄天鎮武神
西湖南側のクアンタン寺(Đền Quán Thánh/鎮武観)に高さ約4mとそれほど大きくないものの、重さが4トンありハノイで最大と言われている銅像があります。
中国や台湾、香港など中華圏ではよく知られた神様で、「西遊記」にもちょっと出ており、「北遊記」という小説では主役を張っているとのこと。役割は北方守護で、漢民族が北方の異民族と対峙する際に作り上げられた神様のようです。
クアンタン寺はもともと当時のタンロン城を北(中国)の攻撃から守るために建てられたそうですが、そうなるとこの神様、中国人にとっては方角によって味方になったり敵になったりするってことですかね。。
まとめ
ほかにも、鎮国寺には釈迦や三国志で知られる関羽、チャン・フン・ダオなどが、玉山祠には文学の神・文昌帝君、武の神・関聖帝君、医学の神・呂祖などが祀られているなどけっこうキリがないのでこの辺で。
軽い気持ちで調べ始めてみたものの、あまり撤去されないのに今でもどんどん増えていて収拾がつかない形となりました。ここで紹介されているのはハノイの像の一部ということで!みなさんもここに記載のない像を見つけたら教えてね(逃げ)!
(追記:西のナムクーン公園(Nam Cường Park /Công viên Thiên Văn Học)というところで数体の像を発見。うち一体はGiovanni Domenico Cassiniというイタリア出身の天文学者だと判明しましたが、残りはコロナで園内に入れず再調査予定。)
参考資料・画像引用元
- ハノイ歴史研究会
- キャリアリンク
- mapio.net
- VOV World
- Google Arts & Culture
- VINESS
- RGF HR Agent
- VN Express
- “ピアノと飛行機” 旅行好きな音楽愛好家のブログ
- http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~nikaido/xuandi.html
- Wikipedia
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